第1章 1話 FXトレーダーの高校生
1話 FXトレーダーの高校生

「ああああああああ!!!」
すばるは悲鳴を上げた。
彼は自分の部屋でパソコンの画面を見つめていた。
画面にはチャートや数字や文字がひしめき合っており、一般人には理解できないような複雑な情報が表示されていた。
これはすばるの趣味であるFXトレードの画面だった。
FXとは外国為替証拠金取引のことで、異なる通貨間の為替レートの変動によって利益を得ることができる投資の一種だった。
すばるはこのFXトレードに夢中になっていた。
彼は高校生になってからこのトレードを始めたが、その才能は並外れていた。
彼は自分の感覚と分析力と勘で、為替レートの動きを予測し、タイミングよく売買を行うことができた。
その結果、彼はわずか数年で莫大な資産を築き上げた。
彼はFXトレーダーの世界では5本の指に入るほどの優秀なトレーダーとして名をとどろかせていた。
しかし、そのことを誰にも言わなかった。そのため周りの友人や家族からは、ただの平凡な高校生だと思われていた。
彼はトレードが生きがいであり、それ以外のことに興味がなかった。日々トレードの利益を求めて、常にチャート画面を見て生活していた。
そのため、彼は万年寝不足であり、体調も悪かった。
しかし、彼はそれでも満足していた。
自分がFXトレーダーとして認められていることに喜びを感じていたからだ。いつからか自分が世界を動かしているような錯覚に陥っていた。
そんな彼が悲鳴を上げた理由は、画面に表示された数字だった。
それは彼が予想した逆の方向に為替レートが動いてしまったことを示していた。
それは彼にとって大きな損失を意味していた。
「くそっ!どうしてこんなことに……!」
すばるは慌てて売買をしようとしたが、すでに手遅れだった。大量の損失を出してしまい、自分の資産が一気に減ってしまったことにショックを受けた。
「これじゃあ……俺の人生……」
彼は絶望的な表情で呟いた。
その時、突然部屋のドアが開いた。
「すばるくん!ご飯よ!」
入ってきたのはすばるの母親だった。
彼女は明るく声をかけてきたが、すばるの顔色を見て驚いた。
「あら?どうしたの?顔色が悪いわね」
「……」
すばるは答えなかった。彼はパソコンの画面から目を離せなかった。
「もしかして……またあれやってるの?」
母親はすばるのパソコンの画面を見て言った。
「あれ」というのはFXトレードのことだった。母親はすばるがFXトレードをしていることを知っていた。しかし、母親はそれがただの趣味だと思っていた。母親はすばるがFXトレードで大金を稼いでいることや、その世界で有名なトレーダーだということは知らなかった。
「すばるくん、あれはやめなさい。あんなものに時間をかけても無駄よ。勉強しなさい。高校も卒業しないと将来困るわよ」
母親はすばるに説教を始めた。
「……うるさい」
すばるは母親に冷たく言った。
「何て言ったの!?」
母親は怒った。
「俺の部屋に勝手に入ってくるな!出て行け!」
すばるは母親を追い出そうとした。
「すばるくん!」
母親は悲しそうに言った。
「……」
すばるは無言で母親を部屋から追い出した。
そして、ドアに鍵をかけた。
「ふざけんな……」
すばるはぶつぶつ言った。
彼は自分の部屋に閉じこもり、再びパソコンの画面に向かった。
彼は自分の損失を取り戻そうと必死になった。
しかし、彼の運は悪く、さらに為替レートが不利に動いてしまい、さらに大きな損失を出してしまった。
彼は自分の資産が目減りしていくのを見て、パニックに陥った。
目は霞だし、胃がきりきりと痛みだし、人生が崩壊していくかのように感じた。
トレーダーをはじめて数年、ここまでの損失ははじめての体験だった。
「どうしよう……どうしよう……」
彼は呟きながら、パソコンの画面を見つめ続けた。
その時、突然パソコンの画面が暗くなった。
「え?」
すばるは驚いた。
彼はパソコンの電源ボタンを押したが、反応がなかった。
パソコンのコードを確認したが、問題はない。
彼はパソコンが壊れてしまったことに気づいた。
「くそっ!どうして今こんなことに……!」
すばるは怒鳴った。
彼はパソコンを叩いたり蹴ったりしたが、効果がなかった。
「もう……どうでもいい……」
すばるは呟いた。
彼はいきおいよくベッドに倒れ込み、目を閉じて、眠りに落ちようとした。
しかし、その時、彼の頭の中で奇妙な声が響いた。
「おめでとうございます。あなたは転生する資格を得ました」
「….え?」